オールアジア系キャストで大ヒットの映画【クレイジー・リッチ!】が面白い

アジア人しか出演していない初めてのハリウッド映画ということで話題になった「クレイジー・リッチ!」(英語タイトル:Crazy Rich Asians)。ニューヨークに住む経済学教授のレイチェルは、ボーイフレンドのニックが親友の結婚式の介添人になるというので、一緒にシンガポールに行くことになります。ニックの家族が桁外れの大金持ちであることを全く知らなかったためビックリしますが、シンガポールでは彼女が着く前にもっと大騒動になっていました。

製作国:アメリカ
公開:2018年(日本公開:2018年)
監督:ジョン・M・チュウ
原作:ケビン・クワン
キャスト:コンスタンス・ウー、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ヨー、ジェンマ・チャン、オークワフィーナ

 

ストーリーは楽しいロマコメだけど、シンガポールの大金持ちの生活を垣間見られる

いつものことで、どんな映画かあまり下調べナシで鑑賞しました。そして、ひとことで言えば「結構いいじゃん」です。

軽いタッチですが、個人の願望と家を第一と考える伝統の対立が描かれています。でも、その対立は表面的なものにとどまり、決して確執の本質には迫っていません。ロマンチックコメディーですから。

主人公のレイチェルは、ニューヨークで経済学を教える30代の中国系アメリカ人大学教授、シングルマザーである母がいます。ボーイフレンドはやはり30代のシンガポール人男性。このニックがレイチェルに「シンガポールに行かないか」と提案したところから話が始まります。

彼のバックグラウンドを何も知らなかったから、シンガポールに着いてビックリです。大金持ちの家族、美しいひとびと、デザイナーブランドの洋服、桁が違う高価なアクセサリー、シンガポールは車があまりに高価で乗っているひとが少ないのですが、それでもこの映画ではオーストラリアでさえあまり見かけない、とんでもなく高価な車のオンパレードです。そして、もちろん大邸宅。

まるで大金持ちのリアリティーショーを観ているかのように、「へええ」と口をぽかんと開けて見入ってしまいました。

もちろんシンデレラ・ストーリーの常で、意地悪なライバルや彼の母親や祖母まで出てきて大反対です。しかしそんなことではメゲないのが、今まで自分で人生を切り開いてきたレイチェルです。

 

レイチェルは新しいタイプのロマコメ主人公タイプとなるか

キャストが全員アジア系ということばかりが話題ですが、わたしがおもしろいと思ったのは、この主人公がおバカさんでヘマばかり、ひとつは必ず大失敗をするという従来のシンデレラストーリーとは全く正反対の主人公というところでした。頭が切れて教授にまで昇りつめる才覚があり、30代だからといって結婚に焦っているわけでもなく、自分の人生にとても満足している颯爽とした女性です。その彼女が愛したひとが大金持ちで家の事業を継がなければならない一人息子だとしたら、さてどうするか、というのがこの映画のテーマです。

つまり、この映画のせいで「シンデレラストーリー」「ロマンチックコメディー」という映画の定番であるカテゴリーが変わるかもしれないと、わたしは期待しているのです。

古くはフラッシュダンス、プリティーウーマンなどの必ず恋人からの大きな助けがあるもの、そしてもう少し後にはおバカだけれど憎めないブリジット・ジョーンズ。これらのヒット作の主人公たちとはどこか違うレイチェルは、新しいロマコメの境地を開いていくのではないでしょうか。

 

粒ぞろいのアジア系キャストたちに喝采

主役のコンスタンス・ウーは前述したとおり強く美しく、今までのシンデレラ・ストーリーのように誰かの(または恋人の)助けを必要としてはいません。どちらかと言うと彼女の演じたレイチェルの恋人ニック(ヘンリー・ゴールディング)の影が薄いのも、彼女とニックの母エリノア(ミシェル・ヨー)の強い女たちの対立が全面に出ているからのようです。

でも惜しむらくは、彼女がイブニング・ドレスを着てニックの親友の結婚式に登場するシーン。ここはもっとゴージャスな登場じゃなきゃダメでしょう…例えば「シンデレラ」の舞踏会への登場シーンのように。皆が振り返るくらい堂々とオーラを振りまいてほしかったです。ドレスもどちらかと言うとジミダサだと思いました(←個人の意見です)。

イギリスからはジェンマ・チャン、オーストラリアからはクリス・パンとレミー・ヒー、そしてフィリピンからはTVショーのホストでもある女優クリス・アキノ(暗殺された政治家ベニグノ・アキノと元大統領のコラソン・アキノの末っ子)が出演しています。このことから見ても、この映画が名のあるアジア系俳優たちを世界中から集めたことがわかります。

もうひとり光っていたのが、オークワフィーナ。変わった名前です。オーシャンズ8にもコンピューターハッキングの天才として出演していた仏頂面の女性ですが、ここではレイチェルの大学時代の親友を演じています。彼女とその家族が徹底的にドタバタコメディーに徹していて、何度も笑ってしまいました。

「ハリウッドも思い切ったことをしたものだ」というのが公開前からの話題でしたが、蓋を開けてみれば大ヒット。これからもこうしたアジア系俳優たちの活躍がさらに広がることが期待されています。

 

でも…なぜ日本ではハリウッド映画のタイトルとポスターを新しくするのか

なんでこれが日本ではクレイジーリッチになるのか意味がわかりませんし、また「アジア系俳優しか出ていない」という話題を完全に無視した形になりました。クレイジーリッチじゃ、どんな映画なのか正直わかりにくいと思います。

それにポスターも野暮ったいです。どうして花火の場面なのでしょう。これも意味不明。英語版のポスターは逆に派手な中国系の色と扇子を組み合わせた背景で、それが「アジア」のシンガポールの金持ちたちの話にマッチしています。

そりゃ昔は「愛と悲しみのナントカ」ばかりで、全く原題からかけ離れた「日本だけの題名」でイイカゲンにしてほしいと思ったものですが、このごろではカナカナ後の氾濫のせいか、そのままカタカナで公開する映画も多くなりました。それはいいのですが、今回の場合は字数の関係なのか、原題から「一番大切な部分」を削除してしまい、どうもタイトルとポスターを見ただけではどんな映画なのか想像もできなくなりました。

 

マーベル映画から流行りだしたエンドクレジットの気になる映像

そうそう、映画最後のクレジット半ばに短い後日談がありました。マーベルの作品でも似たような終わり方をして次の作品に繋げていますが、これは「三部作になるのかな」と、意味深で思わせぶりです。

本の方でも続編がふたつ出ていますから、また後日発表があるかもしれません。楽しみにしています。

オススメ度
★★★★☆
男に助けられるのを待っているシンデレラストーリーではないところが魅力。
オールアジア系キャストだけが話題になっているけれど、それだけじゃない見どころが沢山。

ABOUTこの記事をかいた人

gaby がび
オーストラリア某私立校日本語・フランス語教師。休暇はほとんどタイの首都に滞在しています。 英・独(スイス訛りあり)・仏の多国語遣いですが、一番得意なのはもちろん日本語です。タイ語は買い物ができる程度。ツイートとブログと料理と映画でストレス解消中。映画は基本的に独りで観に行くのが好きです。 映画鑑賞の記録はこちらから。