DCコミックスのスーパーヒーローたちのひとり「アクアマン」の誕生までのストーリーです。DCの前作「ジャスティス・リーグ」の全員登場で初めてお目見えのアクアマンでしたが、ちょっと異質でセクシーで存在感のあるジェイソン・モモアが印象的でした。今度は主人公として登場、そして何と言ってもCGのアトランティス王国がすばらしいです。
監督:ジェームズ・ワン
キャスト:ジェイソン・モモア、アンバー・ハード、ウィレム・デフォー、パトリック・ウィルソン、ニコール・キッドマン
灯台守の人間とアトランティス王国の王女が恋に落ちて…
時は1980年代半ば。嵐の晩、灯台守の独身男性は傷ついたアトランティス王国の女性を海辺で救い出し手当をします。そして恋に落ち、ふたりの子アーサーが海の血と陸の血を受けて生まれるわけですが…。アトランティス王国の王と結婚させられる予定であったアトランナは、自分の夫と息子の命が危ないと悟り、自ら海に戻ります。
このアーサーの父母の出会いから別れまでの甘く悲しい愛は、こうしたファンタジー・アドベンチャーの中では稀有なエピソードで、ニコール・キッドマンの透き通るような肌と美しさが相まってとても印象深いものとなりました。
アトランナから密かに命を受けたアトランティス王国の家臣ヴァルコはアーサーが小さいうちからその能力の開発を助け、魚たちと交信することのできるアーサーは成人するにつれて超人的な力を発するようになります。
アーサーは父親が人間ですが、オームの父親はアトランティス王国の前国王です。つまり異父兄弟ですね。この野心を持ったアトランティス王国の国王オームは、海底を支配しようと企み、それを邪魔する(と思われる)アーサーを殺そうとします。もちろん、自分たちの母が人間と恋に落ちてアーサーを身ごもったことで処刑されてしまったからでもあります。ただ彼の野望はそこで終わらず、海の生物と生態系を破壊し続ける地上の人間たちを征服して自ら海と地上の王となることを望んでいたのです。
オームに忠誠を誓う海底グゼベル国王ネレウスの娘メラ王女はそんな破壊的野心に反発し、アーサーに助けを求めます。
真の海の王となるためには、アトランティス王国の創始者アトラン王の金の三叉の鉾(ほこ)を探さなければなりません。そこからアーサーの冒険と戦いが始まります。
人間に見えないジェイソン・モモアと筋肉増量のパトリック・ウィルソン
ジェイソン・モモアというと、あの「ゲーム・オブ・スローンズ」では未開の部族の王を演じていました。あの風貌を強調させる化粧(または入れ墨)と大きな身体に盛り上がった筋肉、セリフのない役柄が妙にはまっていたのを覚えています。
アクアマンとしての彼はさらに大きくなった筋肉と全身の入れ墨のせいで、もう人間じゃないほどの圧倒的なビジュアルで画面いっぱいにわたしたちを魅了します。いや、もう彼の演技力なんかどうでもいいくらいの迫力です。実際にあまりセリフは多くないし、どちらかというとパブで飲んだくれているほうがはるかに似合っているような、恐ろしげな風貌がニヤリと笑うといやにセクシーで、これは男女ともにファンが増えるだろうなと予測される魅力を発揮していました。
さて、アクアマンの敵であり異父弟であるオーム役はパトリック・ウィルソンです。どちらかと言うともっと線の細い俳優でしたが、ここでは体重と筋肉を増やせと言われて10キロほど増量しています。ですから、「なんだかパトリック・ウィルソンに似ているな」と思ったけれど顔を正面から見るまでわかりませんでした。ずいぶんとムキムキになりましたね。
CGで表現された海の世界の美しさが圧巻
最近の映画はどれもこれもCGが満載で、多少「普通の撮影では無理」と思われるCG使いも「ふうん、カッコいいね」ぐらいであまり印象にも残りません。でもこのアクアマンの海底世界の美しさはすばらしいと思いました。何しろこの世のものとは思われないくらいの色の洪水。幻想的です。海底人たちの動きも華麗に美しく、髪の揺れ具合までよくできていたと思います。
また、海底では馬の代わりに使われているのがサメとタツノオトシゴです。
クラゲの使い方もビックリしました。ふわふわと浮き上がる映像はよくありますが、それだけではなく王女のマントの縁へも使われていて美しい。マーベル映画でもDC映画でも今まで女性の服の美しさにはあまり関心がなかったようですが、このドレスでアクアマンは一歩抜きん出ています。
アメリカの批評ではあまり芳しくない出来と言われましたが、今までマーベルに完全に押されていたDCコミック映画としては一番いい出来だとわたしは思いました。DCコミックスの映画はスーパーマンにしろバットマンにしろ、どうも「暗い」のです。それだけスーパーヒーローたちの私生活の悲しみを浮き出させているとも言えますが、それもドラマとしては少々中途半端です。それだけに、このユーモアもありどちらかというと軽いスーパーヒーロー像は、新しい風を吹き込んだと言えるのではないでしょうか。日本では2月に公開ということですから待ち遠しいですね。
暗くてシリアスだったDCコミックスの映画シリーズとしては異例の軽くて楽しめる冒険活劇。大画面でぜひ観て欲しい映画のひとつです。