伏線テンコ盛り【ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅】はせめて2度観よう

ハリーポッター・シリーズのスピンオフとして製作された、オトナ向けの魔法使い映画。もっとダークになっているところが見どころですが、主人公の著述家ニュート・スキャマンダーが研究している魔法の生き物たち「ファンタスティック・ビースト」がとてもかわいいのです。冒険活劇の中でその生き物たちが重要な役割を担っています。

製作国:アメリカ
公開:2016年(日本公開:2016年)
監督:デヴィッド・イェーツ
原作・脚本:J.K. ローリング
キャスト:エディ・レッドメイン、コリン・ファレル、ジョニー・デップ、エズラ・ミラー

魔法生物学者のニュートがニューヨークに着いて逃してしまった魔法生物たち

1926年ニューヨーク。ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)はファンタスティック・ビースト(魔法生物)のリサーチと研究をしている、イギリス人の魔法生物学者です。アメリカのアリゾナに魔法動物の1匹を逃がすために、船でニューヨークに立ち寄りました。

ところが、スーツケースの取り違えによりノー・マジ(イギリスではマグルと呼ばれていた「魔術が使えない普通の人間」のことをアメリカではこう呼びます)のジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)に魔法動物の入ったスーツケースが渡って、そこから動物たちが逃げてしまいます。

それらを探すためにニューヨークに滞在することになったニュートです。
しかし、魔法動物を悪とするアメリカ合衆国魔法議会 (MACUSA) には目をつけられ、魔法保安局長官グレイブス(コリン・ファレル)は破壊的な寄生物であるオブスキュラスを繰る子供を見つけようと企んで、物語は次々と問題を抱えながらも解決へと向かうかに見えましたが…。

 

ヒーロらしからぬヒーローのニュート・スキャマンダー

ハリー・ポッターも「ヒーローらしからぬヒーロー」でしたが、それでも間違いなく「選ばれし者」でありました。

ところがニュート・スキャマンダーは違います。伏し目がちで人の目を決して見ようとせず、ボソボソと聞き取れないほどの小さな声で話し、ヒョロヒョロと背ばかり高くて髪はボサボサです。彼の特技と言えば、魔法生物たちに好かれ、そして彼自身も魔法生物たちを心底助けたいと思っていることぐらいでしょうか。

イギリス魔法省の闇祓いとして優秀な兄と違い、ニュートは何かに属することを嫌い、ホグワーツ魔法魔術学校でさえほとんど退学させられそうになりましたが、そのころ教師だったダンブルドアに救われています。

そんなニュートですが、その温かい心と不器用ながら真摯な言葉でわたしたちの感情に訴えます。例えば自分を慕っているボウトラックル(草の形の魔法生物です)のピケットを情報と交換に差し出さなければならなかったときの、ニュート。その顔に現れた苦悩と心の痛みにわたしたちまで胸の痛くなる思いをしました。

エディ・レッドメインはそうした心の機微を表現できる稀有な俳優だと言えます。彼だけはオーディションなしでJ.K.ローリングに指名された主役だったそうですが、その魅力なしではこの五部作シリーズは成り立たないと思いました。

 

伏線満載の複雑な人間関係と世界観が始まる…

「ハリー・ポッター」シリーズと同じように、この映画でもかなり沢山の伏線があり「まだ登場していない登場人物たち」についても語られています。一度観たぐらいでは見逃してしまいそうです。わたしもそんなわけで劇場で2回、そしてiTunesストアで購入してもう1回観ました。

ハリー・ポッターでは描かれなかったものとして、魔法使いたちと非魔法使いであるノー・マジの対立があります。ここのところは「Xメン」シリーズと似た面がありますが、時代が禁酒法時代のニューヨークなのでもっと薄暗くて「何かが出てきそうな」雰囲気です。このニューヨークの町並みが見事なCGで大変魅力的に再現されていて物語に引き込まれました。

もうひとつ、ノー・マジのジェイコブ・コワルスキーが魔法を使わない活躍が魔法使いたちと非魔法使いたちの対立のかたわら、J.K.ローリングの「共存」への新しい世界を垣間見せてくれています。アメリカの魔法規律では禁止されている「ノーマジとの恋愛と結婚」経の予感があり、興味深い展開を期待させます。

J.K.ローリングは詳細に至るまで人物、背景、過程を計画してから、物語を書き始めるといいます。
シリーズとして公開される映画の中には、最初は意図されていなかった場面や人物が後から出てきたり、「あれ?」と思うような展開がありますが、それは第1作が公開されたときにはまだシリーズ化が予想されていないからなのでしょう。その点、J.K.ローリングの小説の場合(あるいはこのファンタスティック・ビーストのように脚本の場合)全ての要素がすでに予定され、絡まり合いながら最終章に向かっています。

つまり、5部作となるこのシリーズもやはり最終章が公開されたら第1作めからずっと通して観て「ああ、なるほど、こうだったんだ!」と納得しながら再度楽しめるわけです。

 

オススメ度
★★★★★
5部作ではあるけれど、一応完結はしている第1作め。次の展開がどうなるのか予想さえできないところが、返ってワクワク感をそそる出来栄え。

ABOUTこの記事をかいた人

オーストラリア某私立高校日本語・フランス語教師、休暇はほとんどタイの首都滞在。英・独(スイス訛りあり)・仏の多国語遣いですが、一番得意なのはもちろん日本語。ツイートとブログと料理と映画でストレス解消中。映画は基本的に独りで観るのが好きです。映画鑑賞の記録はコチラから。